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きみに逢いたい・・・ [Novel]




光の速度を超えて
それでも きみに逢いたい

きっと 逢いに行くから
どうぞそこで待っていてください

ア イ シ テ イ マ ス





          などと思いながら、僕は広い宇宙空間に飛び出した。

          僕のちいさな宇宙船は よく晴れた日の満天の空へ向って飛び出してゆく。

          青く輝く地球は まあるい地球線を少しずつ拡大させて

          やがて、ただの球体にしか見えなくなってゆく。

          船内にある大きめのスクリーンは、地球の姿を映し出している。



          僕はチャンネルをきり変えて、きみの姿をスクリーンに求めた。

          いくら離れても、このスクリーンは

          地球上のどんな小さい姿も、映し続けることが出来るはずなんだ。

          まあ、そう聞いているから、きっとそうなんだろう・・・。

          ぼくは、いつでも、きみだけを見ていたいんだよ。



          地球を離れ月を過ぎ、木星越えのコースに舵をとる。

          そして今日からの時間を刻む為、船内のカレンダーと時計を地球からの情報で合わせておく。

          さて、そろそろスピードを上げていこうか。





          今回は太陽系を飛び出し、ひと回りして帰ってくるプロジェクト。

          僕でもう10人目。



          最初の人はまだ帰ってないけど、生存信号は今も送られていて、

          その時間の映像も何年か遅れで届いていた。

          僕が太陽系を飛び出した頃には、きっとみんなが戻っているんだろう。

          司令官や科学者達は、絶対に大丈夫だと言っていたものなぁ・・・。

          僕は帰ったらすぐ、きみにプロポーズをしようと思っているんだ。

          だから、必ず僕のことを待っていて欲しい。

          そう願いを込めて、パワーを中速へと上げていった。





光のスピード
僕はそれと格闘をする

決して追いつかず
手も届かないものだけれど


どこかわき道を抜ける
ワープゾーンを僕は探す


少しでも早く
きみの元へと 戻るために




          きみをスクリーンに映しながら、ぼくはスピードを上げた。

          中速から高速へと・・・。

          どんどんと光のスピードに近付いてゆく。



          きみは、1日に一度、同じ場所に座ってくれる約束をしてくれた。

          どんなことがあろうと、僕にあいさつをするためって・・・。

          スクリーンの中の今日のきみを、静止画にして今日一日の仕事をする。

          きみもそろそろ買い物の時間だものな。

          また明日、可愛い笑顔を見せておくれ。



          僕は時計を見た。

          16時20分になっている。

          そして知らぬ間に時は経って、23時のチャイムが鳴る。

          ああ・・・。

          もう眠らなくては。。

          方向はあっているし、ゴミも塵も見当たらない。

          宇宙塵の警報が鳴るまでは、このまま休もう。





          小鳥のさえずりのアラームで、6時に目覚めた。

          スクリーンには、きみの昨日のほほえみが映っていた。



          おはよう。



          目覚め後のしたくと食事を摂り・・・。

          ああ。。宇宙食はどんなものかって?

          僕たちは、宇宙食とは言ってないんだ。

          船内食といって、自分が食べたいと思って、地上で用意してもらったもの・・・。

          たとえば、かあちゃんの作ったご飯とか、彼女の手作りの食事とか、

          それを宇宙開発局で作ってもらって、特別な製法で小型パッキンするんだ。

          食べる時は、一箇所の特別な場所に少し切れ目を入れて、

          10回ほど振り続けると、ほぼ以前の状態に戻るんだ。

          ホームシックになりそうだけど、これがまたうまいんだ。

          僕はレストランの料理も注文しておいたから、ステキなディナーもだべれるんだぜ。



          おっと、こんなことを話していたら、もういい時間になってしまったよ。

          さて、船の安全を確認してルートも確認。

          そうしたら、報告の信号を送って・・・。

          あとは、彼女に会う事にしよう。

          今日も、元気でいてくれるかなぁ・・・。






やはり 彼女はきれいだ

だけど・・・
今日は やけに大人っぽく見える

こんなステキな彼女の傍に
ずっと居てあげれないなんて


ああ 美しいきみよ




          また今日も一日が終わる・・・。

          なんとなく単調な一日で・・・。

          せめて、きみの声でも聞こえたらいいのに、話せたらいいのに。。。





          また、一日が始まる。

          朝陽も無く、ずっと太陽は僕の宇宙船を照らし続ける。

          いったい、何時が夜なのか朝なのか・・・。

          僕は何をしているのか・・・。

          この船は、光の速さにだんだん近付いているらしい。。

          あと暫くしたら、この最大出力のボタンを押して、光の速さを超えるらしい。

          スタッフはいざという時意外、スクリーン越しの対話をしないんだって、どうしてだろうね。





          こんな淋しい時は、きみの笑顔が見たい。

          今日も、スクリーンにきみをう・つ・・・。


          
          !!

          どうしたんだ!!

          彼女は病気か・・・?

          どうして、おばあさんがそこに居るんだい??

          どうして・・・。



          きみよ・・・。

          あのおばあさんは、きみなのかい?

          どうして・・・。

          ああ・・・なぜ・・・。



          僕がこの旅に出るとき、きみが見せた悲しさは、こういうことなのか。

          もちろん、以前はそういう理論もあったが、今は違うって・・・。

          いろんな文献や研究で発表されていたじゃないか?

          あれは、嘘だったのか・・・?

          それとも、誰にも本当のことは分からなかったのか?



          ああ・・・。

          なんと言うことか。。。

          思わず両手で顔を覆って、何時までも泣いてしまった。。



          どれくらいの時間が流れたかは、自分でもよく分からなかった。

          ふと顔を起こすと、とてもきれいな宇宙焼けが・・・。

          宇宙船の窓へと顔を近づけて、じっと目を凝らす。



          きれいだ・・・。



          涙のあともそのままで見つめていたが、ふと目線を落とし、自分の手を見てみる。。。

          何と皺の多い手だろう。

          いや、皺が増えているのだ。

          この手で触れる頬も額も、こんなに皺が・・・。



          地上に残る者たちだけが年をとるのではなく・・・。

          宇宙へ旅立つ者たちも、多少はゆっくりとなるのかもしれないが、

          確実に、そんなに時間もかからずに年をとってしまうようだ。

          ただ、とてもゆっくりと過ぎるのは、進み続ける宇宙船の時間だけ。。。



          そんな絶望が心を締め付け、僕はその場で倒れこんでしまった・・・。










          ・・・・・・・・・・。





          チュン  チュン チュン ・・・。



          「ねぇ、目を覚まして。」

          「今朝は靄が少し多いみたい。そろそろお家へ帰りましょう。」

          「愛しいあなた。」



          う~ん。。

          ああ、きみよ。

          変わりないきみ、美しい人よ。。

          僕は、どうしていたんだい?



          「昨日、2人で道に迷ったのを覚えていないの?」

          「あなたったら、あたしを助けようとして、この上からおっこったの。」

          「とっても心配したんだけど、真っ暗になっちゃうし・・・。」

          「あなたは、あたしの手を離さず、眠っているだけみたいだったから・・・。」

          「今まで、ここに一緒にいたの。」

          「よかったわ。目覚めてくださって。。」



          ああ。。

          僕はとても悲しい夢を見ていた。

          きみを失ってしまいそうな、そんな悲しい夢を・・・。

          僕は、きみを失いたくないんだ。

          ずっと、ずっと、これからは一緒に生きよう。



          「うれしい。。。」




僕の夢

うれしい夢 悲しい夢

だけど きみのいない夢は見たくない


ずっと手をとり
きみの笑顔を守り続ける


だからきみよ
夢の中でも


ずっと ずっと
きみに逢いたい




*** --- *** --- *** --- *** --- *** --- *** --- ***




  長い物語を、最後まで読んでくださいまして、ありがとうございました。

 -2005. 7.24/ 23:52:28up  2007. 9. 8改
 この物語は、ゆめ乃(tozyeekiki)の頭の中で起こった、架空の物語です。



   - 記憶のメモ -

  人は、絶対に光の速度を超えられない。
 光の速度には限りなく近づけても、その光は超えられない。。。。

 なんてお話を研究者の方が言ってらしたのを、聞いた記憶ありました。
 人が光の速度を超えられないのなら、光の速度を超えて宇宙旅行・・・ってのは、
 夢のまた夢・・・ってことになっちゃいますよね。
 人が、光の速度を超えられれば、いろんな宇宙を旅して、
 帰ってきて、お土産話も出来るのに。。

  いつかの未来に、光の速度を超えて旅する機械ができたとしたら・・・。
 機械は光の速度を越えられたとしても、人は光を超えられない。。
 矛盾ですね。
 でも、機械ができたなら使ってみたい・・・と思うのも、人の常。。。
 誰かがでっかいうそをついて、
 人を乗せて旅立たせたとしたら・・・・。

 光の速度に近づくほど、地上での時間の流れとに差が出てくる。。
 待つ人は歳をとり、進む人はゆっくりと歳をとる。
 んなことを、あたしの頭ん中は考えたのです。
 ばかですねぇ。。。(笑)

 食事について・・・。
 宇宙食がもっと身近なものを、より簡単に持っていけて食べられたらいいなぁ・・なんて。
 不思議な加工を施した宇宙食は、少し封を切ることによって、
 酸素が入り込み、そのことによって水分と熱が発生して、
 それを攪拌することによって・・・・
 あはは。。
 なんかいいことが起こんないかな(笑)





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コメント 19

こういう物語が浮かぶのは、凄いです。v^^;
by (2007-09-08 08:03) 

素敵な物語ですね。読みいちゃいました。
by (2007-09-08 10:31) 

yann

感想文は苦手だけど、ゆっくりじっくり読みました。
ほっ。と言う感じで、素敵でした♪
by yann (2007-09-08 10:54) 

e_chan

ゆめ乃チャンすごいよ~
この集中力の無いe_chanが
全部読んじゃうんだから~

e_chanが生きている間に
宇宙にいける時代がくるかなぁ。。。
けど僕は地球人でいたいな!!
by e_chan (2007-09-08 18:58) 

ガンバルおやじ

今回は大作でしたね。
それにしても素晴らしい発想力です!
by ガンバルおやじ (2007-09-09 05:54) 

ゆめ乃

こうちゃんさん、こんにちは。
拙い物語を読んでくださって、ありがとうございます。
たった一つの言葉に飛びついて、
あらぬ想像をたくましくしています(笑)
by ゆめ乃 (2007-09-09 14:47) 

ゆめ乃

kajyuaさん、こんにちは。
ブログを少しまとめようと、こちらに物語を移動中です(^-^)
ただの思いつきのお話ですが、
こんなふうに言っていただけると、とても励みになります。
ありがとうございました☆
by ゆめ乃 (2007-09-09 14:52) 

ゆめ乃

yannさん、ありがと♪
読んでくれただけでも、すごくうれしぃ~(^-^)
あたしだって、感想文は苦手だから、
yannさんの気持ちがよく分かるわぁ~☆
でも、すごく丁寧に読んでくださったのがわかるから、すっごくうれしかった☆
サンキュねっ♪
by ゆめ乃 (2007-09-09 15:00) 

ゆめ乃

e_chanさん、すごいぉ~い!!!
読破、おめでとうございますぅ(笑)
ん? ひらがなが多かったかな・・・にゃんちゃってぇ~(≧∇≦)キャア~

e_chan。。
ほんとうに、ありがとう。。。(はぁと)

e_chanの生きている間に宇宙旅行かぁ。。
もしかしたら月に別荘が建つ・・・なんてことはあるかもね(笑)
それとe_chanさんも、立派な宇宙人だよ。
なんたって、大きな宇宙の一員だもんね☆
でも、やっぱり異星人にはなりなくない・・・よねぇ~(^v^;)
by ゆめ乃 (2007-09-09 15:12) 

ゆめ乃

ガンバルおやじさん。
読んでくださって、ありがとうございます。
あはは。。ちと、長いお話でしたね(笑)
この先、もっと長いお話が出てきても、目を回さないでくらはい(汗)
発想力・・・なんてステキなものではなく。。
ただの妄想力ですぅ。。
お・おはずかしぃ。。。(笑)
by ゆめ乃 (2007-09-09 15:15) 

ゆめ乃

みみけんさん
COCOさん
nyakkoさん
takagakiさん
CARRERAさん
ひでさん
megumi_mさん
HALさん

こんにちは☆
今日もnice!を、ありがとうございました。
たわいも無い、下手くそなお話がこれからも続くかも!!??
我慢して、読んでくだされ(笑)
by ゆめ乃 (2007-09-09 15:26) 

タイムパラドックスってやつですね。
一時期、これを題材にしたSFばかり読んでた時期がありました。
中でも小松左京さんの「果てしなき流れの果てに」は、SFを超えたロマンがあって面白かったですよ。
by (2007-09-11 03:40) 

ゆめ乃

binpakuさん、こんばんは。
読んでくださって、ありがとうです(^-^)
小松左京さんは、あまり読んだことが無いので、日本沈没とか首都消滅?
ぐらいしか知りませんでした(汗)
でも、この作品の名前だけは聞いたことがあるような・・・。
何でだろうなぁ。。??
今度読んでみまーす♪
by ゆめ乃 (2007-09-13 23:36) 

ゆめ乃

misabooさん
Anneさん
やおかずみさん
西尾征紀さん
読んでくださって、ありがとうございます。
台風以降、すっかり涼しくなりましたが、
みなさまの所は、まだまだ暑いですか?
季節の変わり目は、体調管理が大切です。
皆さまも、気をつけてくださいね。
by ゆめ乃 (2007-09-13 23:40) 

アールグレイ

ネコジャラシたちが、光ってすごくきれいです。
神秘的な感じもします。
お話、すごくおもしろかったです。そして、ちょっと物悲しい感じもしました。
時の流れの大切さも感じます。
今を大事に生きたいです。
by アールグレイ (2007-09-15 00:06) 

ゆめ乃

アールグレイさん、こんにちは。
夕日を浴びたネコジャラシって、大好きなんですぅ☆
お話も読んでくださって、ありがとうございます。
ちょっと考えさせられる話・・・アハ。。
自分で言ってりゃ、世話ないですよね(笑)
でも、今の時間を大切にしなくっちゃ・・・って。
無くす前に、大切なものに気付かなくっちゃ・・・って思いますよね(^-^)
by ゆめ乃 (2007-09-18 12:25) 

ゆめ乃

marimariさん、こんにちは。
読んでくださって、ありがとうございます。
書きなぐりの物語ですが・・・(汗)
よろしければ。また読んでくださいね☆
by ゆめ乃 (2007-09-18 12:27) 

ゆめ乃

mokaさん。。
こっちも読んでくださって、サンキュねっ☆
by ゆめ乃 (2007-09-20 23:41) 

ゆめ乃

寂光さん、こんばんは。
こちらも見てくださって、ありがとうございます。
by ゆめ乃 (2007-09-27 00:23) 

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