SSブログ

元気です。 - part 8 - [Novel]





だんまりを決め込んだ暗い空に
時折 稲妻が走り
最大級の雷鳴が轟くと
あいつはやってくる

音をなくし 色を消して
モノクロの一瞬を作り出す

そんな 寒い朝のひとコマ






  だいぶんと間が開いてしまいましたが、
  「元気です。」のお話の続きを書きました。

  とても寒いこの頃、
  お家でまったりしているとき、夜が長く感じられたりする時などの、
  ちょっと変わった時間つぶしに、お話などいかがでしょう?

  最初のお話を忘れちゃったわ! と、おっしゃられる方は、
  下のお話順番をクリックして下さると、とてもうれしいです^^

   ちょっとだけ、お付き合いしてくださいな^^






元気です -1- -2- -3- -4- -5- -6- -7- -8-







- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -





元気です。 - part 8 -









  夜明けまで飛び続けた小さなすずめと子ガラスは、
  薄明るくなってきた森のずっと遠くの方に、
  微かに光るものを見つけ、それを目当てに飛び続けました。

  やがて山の端に朝日が顔をのぞかせたと同時ぐらいに、
  その光る場所にたどり着くことができました。
  そこは、周りをぐるっと見渡せるぐらいの小さな池でしたが、
  一番底の石まで見えるように思えるほど、すんすんと澄んでいるようでした。
  見ると池の中央の底が、ふわっ・・もこっ・・と湧き立っていて、
  いつでも新鮮な水を地下から運んできているようでした。

  飛び続けて疲れているはずなのに、
  こんなにきれいな水を見たら、思わず飛び込みたくなっちゃうってものだよね~と、
  子ガラスと小さなすずめは、まだ静かな森の池で羽をバタつかせながら、
  楽しそうに水浴びを始めました。


  バシャ バシャ バシャ







  どれくらい経ったでしょうか?
  いえいえ、まだどれほども経っていない気がします。
  あまりのうれしさに子ガラスは、
  カァーカァーと二度ほど大きな声を上げてしまいました。
  楽しいときと言うのは、
  時間も何もかもを忘れてしまうってことがあるものなのですね。
  子ガラスの発した大きな声は、静かな森の中をゆらゆら漂う波のように、
  奥へ奥へと広がっていきました。

  すると、突然。
  「これこれ おいおい、そこのお前さんたち・・・」
  と、自分たち以外の声が、何処からともなく聞こえてきました。
  驚いた子ガラスと小さなすずめは慌てふためき、羽をバタつかせ、
  ビョ~ンと真上に飛び上がったかと思うと、
  あっという間に、また水の上にパシャッと落っこちてしまいました。
  なんとか溺れるのを免れた子ガラスと小さなすずめが、
  首をうんと伸ばし辺りをキョロキョロして声の主を探していると、
  池の端っこにある睡蓮の葉の上で、
  ジーっとこちらの様子を伺っているものを見つけました。
  小さなすずめは、大きく息を吸い込んでから尋ねました。


  「あなたは、だぁれ?」


  「わしかぁ~?
   わしはのぉ、ずっと昔から代々この池に棲んでいるものだが。。
   ふぁあ~・・・」

  「いま声をかけたのは、あなたなの?」

  「ああ、このわしじゃよ。
   だけどおまえさんたち、いったいどうしたってんだい?
   まだ薄暗いうちから、水面に派手な波紋を作って騒ぐだなんて・・・
   ヘタをすると、すぐにもこの池の主がやってきて、
   おまえたちを水の底に引きずり込んでしまうかも知れないってのに!!
   ささ、悪いことぁ~言わないから、もう水から上がっておいで。」


  その時でした。
  池の底を黒い影が走ったかと思うと、水面がぐにゃりと揺れて、
  大きくてのっぺりしたものが、ググッと水の塊を盛り上げたかと思うと、
  パクッと大きな口を開きながら水面へ顔を出しました。







  「おい!!  そこの黒いのと小さい茶色いの!!
   朝っぱらから何を騒いでいるのじゃ。
   あんまり騒がしいと、その小さな足を吸い込んでしまうぞ!!」


  「ひぇ~ ごめんなさぁい~」
  と、子ガラスと小さなすずめは慌てて少し飛び上がり、
  池にかかっている木の小枝の上にとまり言いました。

  「ごめんなさい。
   皆さんを驚かせる気も、起こしちゃう気も全然無かったんだけど、
   長い間飛び続けて、とってもくたびれた時に見えたこの池がすごくきれいで、
   もう何も考えることが出来ずに、
   気付いたときには水でバシャバシャってしてしまっていたんだ。」
  「ほんとうに、ごめんなさい。。」


  そう小さなすずめたちが言うと、
  この池の主と思われるたった今顔を出したその大きなものが言いました。

  「おれは昨日からあまり餌を捕れてない!!
   だから無性に機嫌が悪い!!
   お前達が水面をグラリと揺らしたから、
   てっきり大きな虫が飛び込んできたと思って、
   慌てて起きて出てきちまったっちゅうのに・・・。。なんてこった!!!」

  「サギのヤツじゃあるまいし、薄暗い時間に水辺で遊んでいるだなんて、
   お前達はおっかさんから何にも教えてもらわなかったのか!?」

  と、すっかり目の覚めてしまったこの池の主と思われる大きなものが、
  とても不機嫌な声で苦々しさを顔いっぱいに表して言いました。







  すると子ガラスはセイイッパイ羽を広げ、
  小さなすずめをかばうようにその後ろに押しやりながら言いました。

  「ご・ごめんよ。。んと・・・ ごめんなさい。。
   おいら達は、ずっと前から家族とはぐれちまって・・・
   おっかさんからは、まだ何も教えてもらってねぇんだ。
 
   わ・悪かったな。。。
   こんどから、気をつけるよ。」


  それを聞いたこの池の主と思われる大きなものは、
  怒りでギンギンに開いていたまん丸の目んたまを少し細め、

  「なんだ、それじゃ仕方が無いな。
   だがな、当たり前のことは当たり前のこととして、
   おっかさんに教えてもらわなくったって、
   ちゃんと知っておかにゃ~ならんこともあるからな。
   これからは、よぉく覚えて置けよ。」

  そういい残すとまた、水の中に潜っていってしまいました。
  後に残った小さなすずめと子ガラスは、顔を見合わせ
  ほっ・・・とため息をつきました。
  知らないことがいっぱいあるね。
  おまけに、知らないことって本当に怖いよね。
  子ガラスと小さなすずめは、シミジミとお互いに顔を見合わせ慰めあいました。







  すると、急に・・・
  「おい、おまえたち!!」
  と、何処からか声が聞こえてきました。
  もう誰もいなくなったと思っていたものですから、
  その声が聞こえたときには、あまりの驚きで、
  今とまっていた細い枝から、二羽とも落っこちそうになってしまいました。

  「えっ!? どこぉ~?
   だれ? 誰なの?」

  とキョロキョロしながら耳を澄ますと、
  その声はどうもこのとまっている枝よりも下の池の方から聞こえてくるようでした。

  「ここだよ
   ほら、こっちの葉っぱの上だよ」
  よく見ると、先ほど最初に声をかけてくれたものが、睡蓮の葉っぱの上でこちらを見上げていました。

  「葉っぱの上の、あなたはだぁれ?」
  と、小さなすずめが聞くと、葉っぱの上に乗っかっていたものが言いました。

  「わしかぁ~。。
   わしはさっきも言ったとおり、昔から代々この池に棲んでいるものだよ。
   みんなはわしのことをカエルと呼ぶが、本当はもっと違う名があったはずだと信じているんじゃが、
   どうも幼い時の事ゆえ、うまく思い出せないのじゃよ。
   まあ仕方が無いから、みんなの言うようにカエルと呼んでくれてもよいぞ。」

  「ふぅん・・・カエルさんていうんだ。。
   ところで、さっき水から顔を出したのは誰だったの?」

  「ああ。。あいつか・・
   あいつは、この池の主の鯉じゃよ。
   いつもは温和ないいヤツなんだけど、今日はちっとばかし虫の居所が悪かったようじゃの。
   ホントは優しいやつだから、今日一日のことだけで悪く思わないでやってくれよな。」

  「あいつとの事と言えば・・・
   ちょっともれ聞こえてきたのじゃが、
   おまえさんたちは、幼くして親とはぐれてしまったとか?
   そうか そうか・・・
   それじゃ、何にも知らなくても仕方が無いの。
   だったらこの際じゃ、少しだけ大切なことを教えておいてやろう。

   おまえさんたちを狙っているヘビは、水の中からでもお前さんたちを狙えるんだぞ。
   なんたってあいつは、泳ぐのもずいぶんとうまいからな。
   わしの仲間も、ずいぶんとあいつにやられているんだ。
   おまえさんたちも十分気をつけて、朝日がしっかり昇ったら、すぐにここから飛び立つがいい。
   スズメの一家は、多分この森を抜けたすぐの辺りにいると思うからのぉ。
   さあ、気をつけていくんじゃぞ。」

  そう言うとカエルは、ポチャンと水に飛び込んで、どこかへ泳いでいきました。
  残された子ガラスと小さなすずめは、早々に池から少し離れ、
  枝を大きく張り出した立派な樹の枝にとまり、
  バサバサになった羽を一本ずつ、丁寧に身繕いし始めました。








何にも知らないことは 恥ずかしいことじゃない
いっぱい経験して いっぱい知っていけばいいのだから
でも・・・
何も知ろうとしないことは とっても危険なこと
ついうっかりと 危険のど真ん中に放り込まれる事だって
絶対に無い・・・なんてことは言えないのだから



経験は知恵という 魔法のつぼ
知恵は生き抜くための 勇気のつぼ

どれだけたくさん経験したかが
よろこびという宝の箱を開く鍵になるのだからね







nice!(25)  コメント(18)  トラックバック(0) 
共通テーマ:アート

nice! 25

コメント 18

yann

ゆめ乃ちゃんも元気ですか?
僕は元気です^^
by yann (2011-01-26 22:04) 

彩美

こんにちは。
寒い日が続いているから
お互いに体調には気をつけましょうね。
by 彩美 (2011-01-27 12:41) 

アン

どのお写真もお話しにピッタリ☆
特にカエルさんがいい味出してます!
by アン (2011-01-27 23:36) 

西尾征紀

さまざまな体験を重ねながら
成長していく小雀の
いのちの歓びが伝わってくるようです。
6つめの卵から生まれた小雀のお話も
スタートしてからもうすぐ3年になるのですね。
「経験は知恵という 魔法のつぼ
 知恵は生き抜くための 勇気のつぼ」という言葉も
心に残りました。
by 西尾征紀 (2011-01-28 07:31) 

Pin-BOKE

印象的な空の色です。不思議な感じがしますね♪
by Pin-BOKE (2011-01-28 13:47) 

NsHome

つい先日大会で、たくさんの経験を積んだ中学生を
いっぱい見てきました。よろこびという宝の箱を一つ
開けて、新たな世界に旅立っていくようでしたよ。^^)
by NsHome (2011-01-28 23:45) 

ゆめ乃

こんばんは♪
yannちゃんが元気で、あたしはとってもうれしいです^^
ただちょっと・・・
連日の雪掻きで、ちょっと元気を消耗中ですぅ。。。(泣)

by ゆめ乃 (2011-01-29 02:17) 

ゆめ乃

彩美さん、こんばんは。
ほんと!! 毎日寒い日が続きますね。
こちらはドカンと雪が降り、少し落ち着いたかな・・と思ったら、
また昨日もしっかり降り込んで、ちょっと晴れ。
ホッと一息も束の間。
今日からまた大雪の予報が・・・
足腰バンバンです(泣)
週末からたくさんの場所に雪予報が出ていましたから、
彩美さんも、歩くときには気をつけてくださいね^^

by ゆめ乃 (2011-01-29 02:22) 

ゆめ乃

アンさん、こんばんは。
ぅふふ^^ そういっていただけると、とってもうれしいわ^^
ありがとうございます。
そうそう、あのカエルくん、なかなかの役者さんでしょ(笑)
今回はいい仕事をしていただきました(爆)

by ゆめ乃 (2011-01-29 02:25) 

ゆめ乃

西尾征紀さん、こんばんは。
読んでくださって、ありがとうございます。
そうなんです!!
気付いたらもう三年も経ってしまっていて・・・。
ちゃんと完結して、すずめちゃんをご家族の下に届けなくては・・と思い、また書き始めました^^;
ほんのちょっとでも、何かを伝えられたなら、すっごくうれしいです^^

by ゆめ乃 (2011-01-29 02:30) 

ゆめ乃

Pin-BOKEさん、こんばんは。
雪の日の空は、時々こんな色を見せてくれることがあります。
暗い空に、白い雪が積もった山際。
雪の日は寒くって、外に出るのも億劫になりますが、
こんなコントラストの強い風景を見つけられるのは、楽しみの一つです^^
雪が降ったときなど、ちょっと気にして覗いてみてくださいな^^

by ゆめ乃 (2011-01-29 02:34) 

ゆめ乃

NsHomeさん、こんばんは。
昨年に引き続き、今年も皆さん頑張りの成果を発揮され、
うれしい経験をたくさんされていたみたいですね^^
お嬢さんたちの受賞、本当におめでとうございます。
また新しい階段へと続く扉が開き、新しいよろこびの宝箱を見つけられそうですね^^

by ゆめ乃 (2011-01-29 02:42) 

ゆめ乃

とみっちさん
でいぶさんさん^^
aZUさん
majoramuさん
kakasisannpoさん
qoo2qooさん
阿呆市さん
ホタルの館さん
flutistさん
ちー坊さん
すぅ〜ちん♪さん

こんばんは。
見てくださって、ありがとうございます。
ぅんと寒くなると言っていた天気予報でしたが、
日中はお陽さまが顔をだし、ことのほか暖かで、
前日思いっきり降った雪も、少し融けてくれました。
ただ、今日からまた大雪との予報・・・。
大屋根の雪をかかなくてはいけないかなぁ~と思うと、
とても憂鬱ですぅ。。
雪国のみなさん、たまたま雪の降っちゃった場所の皆さん。
お互いに、何とか乗り切りましょうね^^

by ゆめ乃 (2011-01-29 02:49) 

未来

親が子供に教えてやることが、
周りの者たちが子供たちに教えてやることが如何に大切であるかを
考えさしてくれました。
そればかりか、子供を虐待する親たちの事を思ってしまいました。
by 未来 (2011-01-30 13:32) 

ゆめ乃

未来さん、こんばんは。
読んでくださって、ありがとうございます。
政治家の皆さんが、子供は社会で育てるものだから、子供手当てをとか言っていますが。。
勿論、資金面で支えることも大切だとは思いますが、
本当に子供たちをみんなで育てると言うのは、
昔みたいに子供を叱ったり、教え導いたりしてくれる、
普通の何処にでもいる、ご近所の方が増えることこそ、
社会でみんなで子供を育てる・・・という事のでは? などと、この頃考えてしまいます。
そうすれば、見守りと言うことが進んで、虐待される子供たちも少なくなったり、
逃げ込む所ができたりするのでは・・・? なんてね^^

by ゆめ乃 (2011-02-04 03:29) 

kazz

カエルさん、カワユス(*´∇`*)
by kazz (2011-02-18 02:34) 

ゆめ乃

kazzさん、こちらも見てくださって、ありがとう^^
ふっふっふ^^ 
このカエルさん、なんともいえない顔をしてるでしょ。
ちょっとお気に入りなのよ♪

by ゆめ乃 (2011-02-23 22:04) 

ゆめ乃

スミッチさん
しまどっちさん
タッチおじさんさん

こんばんは。
見てくださって、ありがとうございます。
長いお話ですが、楽しんでいただけたらと思います^^

by ゆめ乃 (2011-02-23 22:07) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

お正月の装いひさびさの大雪 ブログトップ



管理人の許可なく本ブログに掲載してございます全てのものを、無断複製、無断転用、無断転載等されることを、固くお断りいたします。
Copyright(c)2005-2012 tozyee ゆめ乃. All Rights Reserved.

もし、気に入っていただけたなら^^


この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。