ゆめくい - part 7 - [Novel]
雫が 小さな波紋をつくりながら
いくつものココロが もどる夏
たくさんの涙と
尽きぬ話で時を過ごしたなら
笑顔を土産に 空に帰そう
送り盆の灯りと 微笑みを添えて
------------------------------------------------------------------------
お話の順に読んでいただけるとうれしいです。
-1- | -2- | -3- | -4- | -5- | -6- | -7- | -8- | -9- | -*- |
それは月のない夜から幾日か過ぎた頃でした。
夕闇が濃くなり、周りの景色がすべて飲み込まれ、
遠くから塒についた鳥たちの、少し悲しげなため息が聞こえて来ると、
西の空では、少しふっくらとした月が、
霞雲の切れ間を見つけ、恥ずかしそうに顔を覗かせました。
昼の間に踏み固められた雪の上には、うっすらと木々の影が映り、
嘘々しく周りが見渡せるぐらいの、ちょっこし物欲しげな夜でした。
しばらくすると、少し風が出てきたとみえて、
窓に映る庭木の影が、ザワザワと音を立てて揺れ始めました。
この前の夜から、外ばかりを気にしていたおくねばあさんは胸騒ぎを覚え、
慌てて障子戸を開き、山から村へと続く道の方に目を凝らして見てみました。
最初は何も見えませんでしたが、目が慣れてくるうちに、
遠く山際の辺りに、チラチラとする灯りのようなものが見えたような気がしました。
「あれ・・・ あれはなんじゃろうなぁ。。」
そんなことを思いながら、目をまん丸に見開いたり、
猫の目のようにうんと細めたりして見ましたが、
結構遠くで光っていましたので、何かの見間違いのような気もしてきました。
しかし、どうしても気になって仕方の無いその光。
なかなか眼を離すことも出来ず、
その灯りだけを、ずっと追ってしまっていました。
薄ら半刻もながめていたでしょうか。
すっかり身体が冷え切って、ちょっと身震いをした頃でした。
ほとんど動きを見せなかったその光は、急に向きを変え、
先ほどとは打って変わったような速さで、
どんどんと村の方に近づいてくるようでした。
そして気付くと、その光は提灯のようなボンヤリとした灯りに変わり、
その丸みを帯びた灯りの端には、
光に照らされ揺れるような黒い影まで見えてきました。
あっ! あれはもしかして・・・
いえいえ、きっとあれはあの時の旅人さんに違いない。
おくねばあさんは、あの夜の出来事を見て以来ずっと、
あの時の旅人さんが再び現れるのを、
今か今かと心待ちにしていたのでした。
こうはしちゃいられない。
あの旅人さんがおさきばあさんのところに着く前に、
こちらにお連れしなくては・・・・。
おさきばあさんばかり、いい夢を見れるなんて、
そんなのは不公平と言うものよ!!
と思いながら、少し厚手の羽織に腕を通すと、
箕のと笠を引っ掛けて、急いで家を出て行きました。
外は少し前まで月を隠していた薄雲も晴れ、
ますます凍みるように冷え込んできていましたが、
灯りだけに気をとられているおくねばあさんにとっては、
あまり気にならないようでした。
前方でゆらゆら揺れる明かりを目指して、精一杯の速さで走っていきましたが、
それはほれ・・・
どんなに欲深くとも、か弱き乙女・・・
いやいや、乙女はずいぶんと昔に過ぎてしまってはおるが。。
まあ、なんせ、とりあえず・・
おくねばあさんと言えども、か弱きばあさんなのだ・・と言うことです。
ですから、一生懸命に走るとは言っても、
夜更けの雪道のことでしたから、雪黙りに足を取られたり、
ツルツルに固まった雪で足を滑らせたりしますから、
やっとやっとでのていで、
村はずれのおさきばあさんの家近くまでやってきたのでした。。
しかし、思ったよりおくねばあさんの足の方が健脚だったのか、
灯りの主は、まだ峠から下ったばかりの村へと続く一本道を、
のんびりと歩いているようで、その灯りはまだ少し遠くの方にありました。
おやまあ・・・まだあんな所にござったか。。
それにしてもなんとゆっくりだこと。。
それとも何かい?
こりゃあたしの足が、娘時代よりも早くなったってことかいのぉ~
ほっほっほっ
こりゃゆかいじゃわい。
まぁなんにしても、とりあえず間に合ってよかったこと・・・。
そんなことを考えながら、両手を膝の上に置き、
腰を屈めながらぜいぜいとなる息を整えようとして、
頭を下げ足元を見つめながら肩で息をしていると、
不意に目の前が暗くなりました。
突然のことに驚いたおくねばあさんが、
おやまあ、どうしたことかと頭をもたげると、、
そこには、でっかい目ん玉がふたつ、
暗闇の中で怪しく光っていました。
「ぉわっぎゃあ~!! 」
と、おくねばあさんは思わず大きな声を上げ、
どでんと大きなしりもちをついてしまいました。
すると、その何かが少し離れたのか、徐々にその目ん玉はちいさくなり、
まあるい輪郭が見えてはじめ、月明かりがそれを少し照らすと、
なんとなく見知った顔の形に、どんどんと近づいていきました。
おくねばあさんは、目をパチパチしながら、
もう一度よく目ん玉をひん剥いてそれをながめると・・・。
な・なんと!!
あの旅人さんではないですか!!
そしてその旅人さんの顔は、今にもでこが当たりそうな近さで、
おくねばあさんの顔を不思議そうに、まじまじと覗き込んでいたのでした。
「ぅぅぅぎゃあ~」
再びおくねばあさんは叫んでしまいましたが、
今度は慌てて両手で口元を押さえ、
キョロキョロと辺りを見回し、他の誰にも見られなかったことを確認し、
はぁ・・・と、大きなため息をひとつ吐いたのでした。
旅人さんは、相変わらず不思議そうにおくねばあさんをながめていましたが、
あまりにも大きな目をひん剥いているおばあさんを不憫に思い、
いや、思ったのかどうかは定かではありませんが、
とりあえず、旅人さんが声をかけてきました。
「そこのおばあさんや、こんな夜更けにどうなさりんした。」
「なにやら、ずいぶんとお急ぎのご様子。
じゃけど夜は危のうござんすよ。お気をつけくださいな。」
と、言って通り過ぎようとしました。
慌てたおくねばあさんは、
「いえいえ旅人さん。あたしゃあなた様をお迎えにきましたのですよ。」
「今宵はどうぞ、我が家にお立ち寄りくださいな。」
「おやおや、それはとてもありがたいのですが・・・。」
と、ためらっていた旅人でしたが、
ふと思い直したように頭を振ると、おくねばあさんに向かって言いました。
「おばあさんや。。そなたは夢を見たことがありますかいのぉ~?」
おくねばあさんは、待ってました!!とばかりに、勢い込んで言いました。
「それはもう、たぁんとたんと夢を見ますし、
このばばには、たっぷりと夢がございますよ」と。
それを聞くと旅人はにんまりとほくそ笑み、
「それはそれはよございますの。
ぜひ、おばあさんの所へとご一緒いたしましょう。」
おくねばあさんは先にたって案内しようとしましたが、
あまりにも慌てて出てきたので、
足元を照らす提灯を、うっかり忘れてきてしまいました。
どうしたら良いかと、もぞもぞ身体をまさぐっていると、
旅人さんが、ぷっくりと出っ張った腹の陰から
「ほれっ」と、提灯をひとつ取り出して渡してくれました。
まあ・・旅をする人というのは、なんと用心が良いのだろう。
こんな立派な提灯でさえ、余分にいくつも持ってきているとは・・・。
それにしても、提灯は折りたためるとは言え、こんなにも立派な提灯。
出てきた途端に灯もついていたし、いったいどうやって点けたのじゃろぅ。。
このまんまの状態で、あの腹の中にでも入れておいたのかいのぉ~
こりゃ、おかしや 可笑しや・・・
などと、ひとり笑いながら、旅人を家の方へと誘(いざな)ったのでした。
2011. 8. 6 つづく
2013. 7. 5 改
-1- | -2- | -3- | -4- | -5- | -6- | -7- | -8- | -9- | -*- |
トマトが少し割れてしまっていたので、早く食べない!! と、
久しぶりに冷静パスタを作ることにしました。
いつもなら、トマトや他のお野菜も生・もしくはほぼ生の状態で使うのですが、
今回はすべて熱を通して作ってみました。
ニンニク・玉ねぎ・ピーマン・トマトは、オリーブオイルと混ぜ合わせて、レンヂでチン♪
スープはチキンと昆布茶で早業^^
おまけに、家にあった麺を使ったので、ちょっと太目の1.6mm。
すっごく簡単でしたが、結構いけましたよ^^;
勿論、塩・コショーもお忘れなく!
それからオバケのようなキュウリをもらったので、スライサーで細く切って、
軽く塩もみしてよく絞ったものを、そうめんと一緒に食べました。美味しいよ♪
それでもまだ余っていたので、昨日はピリ辛キューリのとろみスープ浸しと、
ごろごろキューリカレーを作りました。
えっ! まだまだあるのぉ~。。。
どうしよう・・・・(汗)
キュウリとなすとピーマンと。。。たくさん余っているけれど、
どうやって食べると、いっぱい美味しく食べられるかしら?
みなさんは、どうして食べてるの?
教えてもらえると、うれしいな^^
Copyright(c)2005-2012 tozyee ゆめ乃. All Rights Reserved.
ハスの写真素敵ですネ・・・こんなに素敵な写真を撮りたいですネ。
お話興味深く読ませて頂きました。続きが楽しみですね・・・(^^;
by ちゃーちゃん (2011-08-15 18:15)
こんばんは。
"ゆめくい"6を読み直してみました^^;
明るく楽しげな おさきばあさんが羨ましくて おくねばあさんも
旅人が現れるのを待つ続けたのでしたね!
おさきばあさんはお爺さんとの繋がりを感謝していたので・・
おくねばあさんは 旅人さんとの関係が上手くいくのか 興味津々
・・・楽しみです。。
お野菜が一度にたくさん揃う時がありますよね。。
ゆめ乃さんはお料理がお得意のようだから・・・ちょっと恥ずかしいのですが
手抜き"ラタトゥイユ"
トマト ズッキーニ(きゅうり) パプリカ(ピーマン) ナス
玉ねぎ かぼちゃ(これは外せません)
いつものように(一口大) 野菜を切りそろえ 耐熱容器に
そして クレジーソルト 塩 醤油(少々) オリーブオイルを入れ
全体にからめて レンジへ。。
15分(7分と8分)途中 一度上下を撹拌・・・
味がなじむように20分ほど冷ましながら置く。
かぼちゃの甘みが決め手です。
普通に作っても炒めて蒸し煮にする "手間いらず"ですよね!!
きゅうり なす みょうが しょうがなど ジッパー付きの袋で・・・
お好みの漬け汁に。。
ゆめ乃さんのを読み直したら 同じようなことをしていましたね^^;
by ララアント (2011-08-15 21:14)
お久しぶりデスデスゥ~(^^)/
毎日暑い日続いていますが元気ですか?
by の (2011-08-17 11:22)
ちゃーちゃんさん、こんにちは。
お話を読んでくださって、ありがとうございます。
半分眠りながら書いていたので、文章がちとおかしい所多すぎですが、
懲りずに、また続きも読んでみてくださいね。
もうしばらくしたら、アップしますので^^
ハスの写真もほめてくださって、ありがとうございます。
午後のお陽さまのご機嫌が良かったみたいで、
とってもきれいな景色が見れました。
こんなときは、みんながきれいに撮れると思いますので、
お陽さまとお花のご機嫌を聞いて撮ってみてくださいね☆
by ゆめ乃 (2011-08-17 16:44)
ララアントさん、こんにちは。
お話を読んでくださって、ありがとうございます^^
続きまで期待していただけて、本当にうれしいです。
写真を見繕って、続きをアップしますね^^
それと・・・
お料理を教えてくださって、ありがとうございます。
実は・・・ほとんどお料理は自己流で、よく似たものしか出来ないんです(泣)
おまけに、新作に挑戦しては失敗ばかり(汗)
だから簡単なものを教えていただけると、ほんとうに助かっちゃうんです^^
"ラタトゥイユ" も、名前は知っていましたが、作ったことは無いんです。
以前、夏野菜の煮物を作って大失敗していたので、ちょっとおっかなびっくりでしたが、
せっかく教えていただいたのだからと、今日挑戦してみました。
ふふふ
あとで、成果のほどはブログにアップしておきますね(笑)
ありがとうございました☆
by ゆめ乃 (2011-08-17 16:58)
のさん、ご無沙汰ぁ~です!!
ホント、毎日暑いですね。
こちら、暑さにパソのほうが参ってしまっています(泣)
のさんの所は、こちらより標高が高いですから、ちょっとは涼しいのでは・・・?
なぁ~んて思っていましたが、やっぱり同じで暑いですよね^^;
来週は少し涼しくなるらしいですから、ちょっと期待したいです。
でも、お元気そうでよかったです。
また、ポチポチとお伺いさせていただきます^^
by ゆめ乃 (2011-08-17 17:12)
majoramuさん
qoo2qooさん
ちー坊さん
kakasisannpoさん
yannさん
rebeccaさん
スミッチさん
ホタルの館さん
Pin-BOKEさん
えいちゃんさん
彩美さん
こんにちは。
見てくださって、ありがとうございます。
そろそろ早いところでは稲刈りが始まるそうです。
まだまだ暑く、はや稲刈りなの?と思っちゃいました。
季節は立秋。
そろそろ実りの秋なのですね。
by ゆめ乃 (2011-08-17 17:24)
こんにちは。
連日の猛暑に少しバテ気味。
暑いのも今日までとか?
夜になると外は涼しく虫が鳴いているけどね。
by 彩美 (2011-08-18 14:41)
彩美さん、こんにちは。
本当に暑かったですね。
もう、お盆休みは外に出るのが嫌になっちゃうほどでした。
でも、天気予報の通り。。
雨が降ったとたんに、涼しくなり始め、
今日なんか、ちょっと寒いくらいです。
でも、虫はすごいですね。
暑いうちでも、立秋を過ぎた頃になったら、ちゃんと鳴き始めますものね^^
それにしても、そんな虫さんたちでさえビックリの涼しさ!!
ちょっと極端で、身体が持ちません(泣)
彩美さんも、寝冷えなんかしないでね☆
by ゆめ乃 (2011-08-20 16:21)
でいぶさんさま、こんにちは。
見てくださって、ありがとうございます^^
涼やいで、少し過ごしやすくなりましたね。
お外での撮影も、少しは楽になるかも知れませんね。
by ゆめ乃 (2011-08-20 16:26)
おくねばあさんの物語はますます快調ですね。
さて、これからはどうなるのだろう・・・。
これからも楽しみにしています。
by 未来 (2011-08-27 07:09)