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ゆめくい - part 7 - [Novel]





雫が 小さな波紋をつくりながら
いくつものココロが もどる夏






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たくさんの涙と
尽きぬ話で時を過ごしたなら

笑顔を土産に 空に帰そう



送り盆の灯りと 微笑みを添えて




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お話の順に読んでいただけるとうれしいです。

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  それは月のない夜から幾日か過ぎた頃でした。

  夕闇が濃くなり、周りの景色がすべて飲み込まれ、
  遠くから塒についた鳥たちの、少し悲しげなため息が聞こえて来ると、
  西の空では、少しふっくらとした月が、
  霞雲の切れ間を見つけ、恥ずかしそうに顔を覗かせました。
  昼の間に踏み固められた雪の上には、うっすらと木々の影が映り、
  嘘々しく周りが見渡せるぐらいの、ちょっこし物欲しげな夜でした。

  しばらくすると、少し風が出てきたとみえて、
  窓に映る庭木の影が、ザワザワと音を立てて揺れ始めました。
  
  この前の夜から、外ばかりを気にしていたおくねばあさんは胸騒ぎを覚え、
  慌てて障子戸を開き、山から村へと続く道の方に目を凝らして見てみました。

  最初は何も見えませんでしたが、目が慣れてくるうちに、
  遠く山際の辺りに、チラチラとする灯りのようなものが見えたような気がしました。
  「あれ・・・ あれはなんじゃろうなぁ。。」
  そんなことを思いながら、目をまん丸に見開いたり、
  猫の目のようにうんと細めたりして見ましたが、
  結構遠くで光っていましたので、何かの見間違いのような気もしてきました。
  しかし、どうしても気になって仕方の無いその光。
  なかなか眼を離すことも出来ず、
  その灯りだけを、ずっと追ってしまっていました。

  薄ら半刻もながめていたでしょうか。
  すっかり身体が冷え切って、ちょっと身震いをした頃でした。
  ほとんど動きを見せなかったその光は、急に向きを変え、
  先ほどとは打って変わったような速さで、
  どんどんと村の方に近づいてくるようでした。

  そして気付くと、その光は提灯のようなボンヤリとした灯りに変わり、
  その丸みを帯びた灯りの端には、
  光に照らされ揺れるような黒い影まで見えてきました。



  あっ! あれはもしかして・・・
  いえいえ、きっとあれはあの時の旅人さんに違いない。


  おくねばあさんは、あの夜の出来事を見て以来ずっと、
  あの時の旅人さんが再び現れるのを、
  今か今かと心待ちにしていたのでした。


  こうはしちゃいられない。
  あの旅人さんがおさきばあさんのところに着く前に、
  こちらにお連れしなくては・・・・。

  おさきばあさんばかり、いい夢を見れるなんて、
  そんなのは不公平と言うものよ!!
  と思いながら、少し厚手の羽織に腕を通すと、
  箕のと笠を引っ掛けて、急いで家を出て行きました。

  外は少し前まで月を隠していた薄雲も晴れ、
  ますます凍みるように冷え込んできていましたが、
  灯りだけに気をとられているおくねばあさんにとっては、
  あまり気にならないようでした。





  前方でゆらゆら揺れる明かりを目指して、精一杯の速さで走っていきましたが、
  それはほれ・・・
  どんなに欲深くとも、か弱き乙女・・・
  いやいや、乙女はずいぶんと昔に過ぎてしまってはおるが。。
  まあ、なんせ、とりあえず・・
  おくねばあさんと言えども、か弱きばあさんなのだ・・と言うことです。
  ですから、一生懸命に走るとは言っても、
  夜更けの雪道のことでしたから、雪黙りに足を取られたり、
  ツルツルに固まった雪で足を滑らせたりしますから、
  やっとやっとでのていで、
  村はずれのおさきばあさんの家近くまでやってきたのでした。。

  しかし、思ったよりおくねばあさんの足の方が健脚だったのか、
  灯りの主は、まだ峠から下ったばかりの村へと続く一本道を、
  のんびりと歩いているようで、その灯りはまだ少し遠くの方にありました。


  おやまあ・・・まだあんな所にござったか。。
  それにしてもなんとゆっくりだこと。。
  それとも何かい? 
  こりゃあたしの足が、娘時代よりも早くなったってことかいのぉ~
  ほっほっほっ
  こりゃゆかいじゃわい。
  まぁなんにしても、とりあえず間に合ってよかったこと・・・。

  そんなことを考えながら、両手を膝の上に置き、
  腰を屈めながらぜいぜいとなる息を整えようとして、
  頭を下げ足元を見つめながら肩で息をしていると、
  不意に目の前が暗くなりました。

  突然のことに驚いたおくねばあさんが、
  おやまあ、どうしたことかと頭をもたげると、、
  そこには、でっかい目ん玉がふたつ、
  暗闇の中で怪しく光っていました。






  「ぉわっぎゃあ~!! 」
  と、おくねばあさんは思わず大きな声を上げ、
  どでんと大きなしりもちをついてしまいました。

  すると、その何かが少し離れたのか、徐々にその目ん玉はちいさくなり、
  まあるい輪郭が見えてはじめ、月明かりがそれを少し照らすと、
  なんとなく見知った顔の形に、どんどんと近づいていきました。
  おくねばあさんは、目をパチパチしながら、
  もう一度よく目ん玉をひん剥いてそれをながめると・・・。
  な・なんと!!
  あの旅人さんではないですか!!
  そしてその旅人さんの顔は、今にもでこが当たりそうな近さで、
  おくねばあさんの顔を不思議そうに、まじまじと覗き込んでいたのでした。

  「ぅぅぅぎゃあ~」
  再びおくねばあさんは叫んでしまいましたが、
  今度は慌てて両手で口元を押さえ、
  キョロキョロと辺りを見回し、他の誰にも見られなかったことを確認し、
  はぁ・・・と、大きなため息をひとつ吐いたのでした。



  旅人さんは、相変わらず不思議そうにおくねばあさんをながめていましたが、
  あまりにも大きな目をひん剥いているおばあさんを不憫に思い、
  いや、思ったのかどうかは定かではありませんが、
  とりあえず、旅人さんが声をかけてきました。

  「そこのおばあさんや、こんな夜更けにどうなさりんした。」
  「なにやら、ずいぶんとお急ぎのご様子。
   じゃけど夜は危のうござんすよ。お気をつけくださいな。」
  と、言って通り過ぎようとしました。
  慌てたおくねばあさんは、
  「いえいえ旅人さん。あたしゃあなた様をお迎えにきましたのですよ。」
  「今宵はどうぞ、我が家にお立ち寄りくださいな。」

  「おやおや、それはとてもありがたいのですが・・・。」
  と、ためらっていた旅人でしたが、
  ふと思い直したように頭を振ると、おくねばあさんに向かって言いました。
  「おばあさんや。。そなたは夢を見たことがありますかいのぉ~?」

  おくねばあさんは、待ってました!!とばかりに、勢い込んで言いました。
  「それはもう、たぁんとたんと夢を見ますし、
   このばばには、たっぷりと夢がございますよ」と。
  それを聞くと旅人はにんまりとほくそ笑み、
  「それはそれはよございますの。
   ぜひ、おばあさんの所へとご一緒いたしましょう。」


  おくねばあさんは先にたって案内しようとしましたが、
  あまりにも慌てて出てきたので、
  足元を照らす提灯を、うっかり忘れてきてしまいました。
  どうしたら良いかと、もぞもぞ身体をまさぐっていると、
  旅人さんが、ぷっくりと出っ張った腹の陰から
  「ほれっ」と、提灯をひとつ取り出して渡してくれました。

  まあ・・旅をする人というのは、なんと用心が良いのだろう。
  こんな立派な提灯でさえ、余分にいくつも持ってきているとは・・・。
  それにしても、提灯は折りたためるとは言え、こんなにも立派な提灯。
  出てきた途端に灯もついていたし、いったいどうやって点けたのじゃろぅ。。
  このまんまの状態で、あの腹の中にでも入れておいたのかいのぉ~
  こりゃ、おかしや 可笑しや・・・
  などと、ひとり笑いながら、旅人を家の方へと誘(いざな)ったのでした。





   2011. 8. 6  つづく
   2013. 7. 5 改



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   トマトが少し割れてしまっていたので、早く食べない!! と、
   久しぶりに冷静パスタを作ることにしました。

   いつもなら、トマトや他のお野菜も生・もしくはほぼ生の状態で使うのですが、
   今回はすべて熱を通して作ってみました。
   ニンニク・玉ねぎ・ピーマン・トマトは、オリーブオイルと混ぜ合わせて、レンヂでチン♪
   スープはチキンと昆布茶で早業^^
   おまけに、家にあった麺を使ったので、ちょっと太目の1.6mm。
   すっごく簡単でしたが、結構いけましたよ^^;
   勿論、塩・コショーもお忘れなく!
   
   それからオバケのようなキュウリをもらったので、スライサーで細く切って、
   軽く塩もみしてよく絞ったものを、そうめんと一緒に食べました。美味しいよ♪
   
   それでもまだ余っていたので、昨日はピリ辛キューリのとろみスープ浸しと、
   ごろごろキューリカレーを作りました。
   
   えっ! まだまだあるのぉ~。。。
   どうしよう・・・・(汗)
   
   キュウリとなすとピーマンと。。。たくさん余っているけれど、
   どうやって食べると、いっぱい美味しく食べられるかしら?
   みなさんは、どうして食べてるの?
   教えてもらえると、うれしいな^^






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コメント 11

ちゃーちゃん

ハスの写真素敵ですネ・・・こんなに素敵な写真を撮りたいですネ。
お話興味深く読ませて頂きました。続きが楽しみですね・・・(^^;
by ちゃーちゃん (2011-08-15 18:15) 

ララアント

こんばんは。
"ゆめくい"6を読み直してみました^^;
明るく楽しげな おさきばあさんが羨ましくて おくねばあさんも
旅人が現れるのを待つ続けたのでしたね!
おさきばあさんはお爺さんとの繋がりを感謝していたので・・
おくねばあさんは 旅人さんとの関係が上手くいくのか 興味津々
・・・楽しみです。。

お野菜が一度にたくさん揃う時がありますよね。。
ゆめ乃さんはお料理がお得意のようだから・・・ちょっと恥ずかしいのですが

手抜き"ラタトゥイユ"
   トマト ズッキーニ(きゅうり) パプリカ(ピーマン) ナス
   玉ねぎ かぼちゃ(これは外せません)
  いつものように(一口大) 野菜を切りそろえ 耐熱容器に
  そして クレジーソルト 塩 醤油(少々) オリーブオイルを入れ
  全体にからめて レンジへ。。
  15分(7分と8分)途中 一度上下を撹拌・・・
  味がなじむように20分ほど冷ましながら置く。
  かぼちゃの甘みが決め手です。

  普通に作っても炒めて蒸し煮にする "手間いらず"ですよね!!

きゅうり なす みょうが しょうがなど ジッパー付きの袋で・・・
お好みの漬け汁に。。

ゆめ乃さんのを読み直したら 同じようなことをしていましたね^^;



by ララアント (2011-08-15 21:14) 

の

お久しぶりデスデスゥ~(^^)/
毎日暑い日続いていますが元気ですか?
by (2011-08-17 11:22) 

ゆめ乃

ちゃーちゃんさん、こんにちは。
お話を読んでくださって、ありがとうございます。
半分眠りながら書いていたので、文章がちとおかしい所多すぎですが、
懲りずに、また続きも読んでみてくださいね。
もうしばらくしたら、アップしますので^^
ハスの写真もほめてくださって、ありがとうございます。
午後のお陽さまのご機嫌が良かったみたいで、
とってもきれいな景色が見れました。
こんなときは、みんながきれいに撮れると思いますので、
お陽さまとお花のご機嫌を聞いて撮ってみてくださいね☆

by ゆめ乃 (2011-08-17 16:44) 

ゆめ乃

ララアントさん、こんにちは。
お話を読んでくださって、ありがとうございます^^
続きまで期待していただけて、本当にうれしいです。
写真を見繕って、続きをアップしますね^^

それと・・・
お料理を教えてくださって、ありがとうございます。
実は・・・ほとんどお料理は自己流で、よく似たものしか出来ないんです(泣)
おまけに、新作に挑戦しては失敗ばかり(汗)
だから簡単なものを教えていただけると、ほんとうに助かっちゃうんです^^

"ラタトゥイユ" も、名前は知っていましたが、作ったことは無いんです。
以前、夏野菜の煮物を作って大失敗していたので、ちょっとおっかなびっくりでしたが、
せっかく教えていただいたのだからと、今日挑戦してみました。
ふふふ
あとで、成果のほどはブログにアップしておきますね(笑)
ありがとうございました☆

by ゆめ乃 (2011-08-17 16:58) 

ゆめ乃

のさん、ご無沙汰ぁ~です!!
ホント、毎日暑いですね。
こちら、暑さにパソのほうが参ってしまっています(泣)
のさんの所は、こちらより標高が高いですから、ちょっとは涼しいのでは・・・?
なぁ~んて思っていましたが、やっぱり同じで暑いですよね^^;
来週は少し涼しくなるらしいですから、ちょっと期待したいです。
でも、お元気そうでよかったです。
また、ポチポチとお伺いさせていただきます^^

by ゆめ乃 (2011-08-17 17:12) 

ゆめ乃

majoramuさん
qoo2qooさん
ちー坊さん
kakasisannpoさん
yannさん
rebeccaさん
スミッチさん
ホタルの館さん
Pin-BOKEさん
えいちゃんさん
彩美さん

こんにちは。
見てくださって、ありがとうございます。
そろそろ早いところでは稲刈りが始まるそうです。
まだまだ暑く、はや稲刈りなの?と思っちゃいました。
季節は立秋。
そろそろ実りの秋なのですね。

by ゆめ乃 (2011-08-17 17:24) 

彩美

こんにちは。
連日の猛暑に少しバテ気味。
暑いのも今日までとか?
夜になると外は涼しく虫が鳴いているけどね。
by 彩美 (2011-08-18 14:41) 

ゆめ乃

彩美さん、こんにちは。
本当に暑かったですね。
もう、お盆休みは外に出るのが嫌になっちゃうほどでした。
でも、天気予報の通り。。
雨が降ったとたんに、涼しくなり始め、
今日なんか、ちょっと寒いくらいです。
でも、虫はすごいですね。
暑いうちでも、立秋を過ぎた頃になったら、ちゃんと鳴き始めますものね^^
それにしても、そんな虫さんたちでさえビックリの涼しさ!!
ちょっと極端で、身体が持ちません(泣)
彩美さんも、寝冷えなんかしないでね☆

by ゆめ乃 (2011-08-20 16:21) 

ゆめ乃

でいぶさんさま、こんにちは。
見てくださって、ありがとうございます^^
涼やいで、少し過ごしやすくなりましたね。
お外での撮影も、少しは楽になるかも知れませんね。

by ゆめ乃 (2011-08-20 16:26) 

未来

おくねばあさんの物語はますます快調ですね。
さて、これからはどうなるのだろう・・・。
これからも楽しみにしています。
by 未来 (2011-08-27 07:09) 

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