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ゆめくい - part 8 - [Novel]





さっきまで雨が降っていたんだよ
ほんとだよ

だけど、ちょっと眼を放している隙に
お月さんまで出てきたんだよ
ほんとだよ










全国的な梅雨明けも、もうすぐのようですね。
北陸はまだ明けていませんが、
今日はまたとても暑くて、暑くて・・・
って、それは聞き飽きた!! って感じですが、やっぱり暑いね^^;

夜眠っている時にでも熱中症になることもあるらしいので、
眠る前のコップ一杯ほどの水分の補給と、
枕元へのスポーツドリンクなどの置き水をしておくことがお勧めです。







さてさて、お外も暗くなってきました。
暑さで寝苦しい夜のお供に、ちぃさな物語などいかがでしょうか?
「ゆめくい」の続きが出来上がりました。
よろしければ、読んでいただけるとうれしいです^^





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お話の順に読んでいただけるとうれしいです。

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「ゆめくい - part 8 -」



  その頃、黙って出かけていたおくねばあさんの家では、
  表戸のかんぬきも扉も開きっぱなしで、
  姿の見当たらないおくねばあさんを探していました。
  特に、突然暗い中を飛び出していったのを見咎めた家のものがおり、
  おくねばあさんの身を案じるあまり、
  近所のものをも巻き込んでの大騒ぎになっていたのでありました。

  そんなことになると言うことまでは気が回っていなかったおくねばあさんが、
  のんびりと、うれしそうに客人を連れて山のほうから戻ってきたものですから、
  またまたお屋敷中が大騒ぎとなりました。








  「おくねさんが戻ったぞー」
  「おくねおばあさんが戻られましたよぉ~」
  「あれあれ よっかた よかった」
  と、大勢のものたちが口々に、おくねばあさんの無事を喜びましたが、
  「なんだよ あたしゃちょっと、旅人さんをお迎えに行ってただけじゃないのさ。」
  「そんなに大騒ぎするほどのことじゃないよ。」
  と、うそぶいてしまいました。
  本当はこんなに心配してもらったのは久しぶりのことだったので、
  うれしくてうれしくて仕方が無かったのでしたが、
  いつもの照れが出てしまい、なかなか素直になれないのでありました。
  そんなおばあさんを孫の伊知郎左衛門がたしなめると、
  「そんなに心配なんぞしてほしくなんか無いんだよ。」
  と、ますます意固地になってしまいました。
  心配して集まった者達が、呆れ顔でため息をつく中、
  おくねばあさんは旅人を従えて奥の離れへと行ってしまったのでした。

  心やさしい孫の伊知郎左衛門は、おばあさんの非礼をわび、
  また集まってくれたことのお礼を言うと、
  砂糖菓子をそれぞれにひと包みずつ渡し、引き上げてもらったのでした。

  孫の伊知郎左衛門がおくねばあさんをたしなめようと奥の離れに行くと、
  おばあさんは、
  「はいはい 分かったよ」と、軽くあしらい、
  「旅人さんに何か酒と肴でも持ってきておくれ。」
  と言い、伊知郎左衛門の鼻先で、離れの戸をぴしゃりと閉めてしまったのでした。

  伊知郎左衛門が大徳利と、
  さかなの塩焼きと野菜の炊いたのやなますなどをお膳に乗せ離れへ行くと、
  なんだか異様に静かでしたが、すぐに扉が開き、
  おくねばあさんの笑い声まで聞こえてきました。
  そしてお膳を受け取ると、もうここへ来なくて良いからと念を押され、
  またまた締め出しを食ったように、扉は閉められてしまいました。
  まあ、あんなに笑うおばあさんを見るのも久しぶりだし、
  旅人さんに来てもらったのも、良かったことなのかもしれないと、
  そのときの伊知郎左衛門は思ったのでした。


  離れにはお膳が並べられ、火鉢にかけられた湯気立つ鍋の中では、
  小さな徳利が何個か並んで、そろそろ人肌になった酒が飲み頃となっていた。
  おくねばあさんはそのうちの一本を取り出すと、
  徳利の雫を拭き、お熱いうちにと酒を勧めていた。

  旅の話などを聞きながら、一通り食が進むと、おくねばあさんが切り出しました。
  「以前、旅人さんをおさきさんの所でお見かけしたんですよ。。」
  「だから、あたしもたまにゃ~旅人さんのお話をお聞きしたいなぁ・・と思いましてね。」
  「おさきさんのところでは、どんなお話をされていたのですか?」
  そう尋ねると旅人は、
  「いやぁ・・なにねぇ~。。たいした話などしてはおりませぬが、夢の話などをね。」
  「そういえばおくねばあさんも、たいそう夢を見られるそうな。」
  「どんな夢を見られるのか、話してみては下さらぬか。」
  「面白い夢でも、怖い夢でも、これからの夢でもかまいませんからのぉ。」

  「夢はたくさん見ますし、沢山ありますが・・・。」
  「最近よく見る夢は、強盗に追いかけられて、殺されそうになっちまう夢ですのぉ。。」
  「それはそれは恐ろしくて、毎晩眠るのが怖くなるほどですわい。」

  「おやおや、それはお困りでしょうね。」
  「そろそろ夜も更けてきましたし、そろそろ休ませていただきます。」
  「おくねばあさんも、そんなに怖い夢を見ないですむようになるといいですの。」
  「それでは、おやすみなさいな。」

  その言葉を聞くと、あれほど興奮して眠れそうに無かったおさきばあさんなのに、
  仕切りとあくびが出始め、まぶたが重くなり、もう立っているのがやっとの状態になってきてしまいました。

  おくねばあさんは旅人に向かって、
  「あたしも今夜ははしゃぎすぎたようで、もう眠くてたまりません。」
  「あたしはそろそろお暇いたしますが、奥の部屋におりますので、ご用の節はお起こしくださいませねぇ。」
  「それじゃ、おやすみなんせぃ。。。」
  と、奥の部屋へ入ると、布団の上に倒れ込むようにして、
  あっという間に睡魔が襲い、そうそうに大きないびきをかき始めました。





  カーン カーン と少し甲高い木槌の音が鳴り響きました。
  母屋の勝手口に吊るしてある、時を告げる木版を叩く音が、朝を告げる音でした。
  その音は、少し小さくはなりましたが、おくねばあさんが眠っている離れにも、小鳥のさえずりと共に聞こえてきました。
  その音が聞こえたのか、突然おくねばあさんがパチリと目を見開くと、がばっと上半身を起こし、
  ほんの少しかけあわせを調えると、バタバタと客人のいるはずの部屋へとかけていきました。

  「おやおや おくねばあさん、お早いですのぉ。。」
  「夕べは、よく眠られましたかな?」
  と、暢気そうに煙管を燻らせながら旅人が尋ねました。

  「おや、そういえば・・・。」
  「いつもなら、なんだかいやな気分で飛び起きていたような気がしましたが・・・。」
  「はて、何かありましたかいのぉ・・・?」
  「それよりもなによりも、今朝はなんだかとても気分がよございます。」
  「はてはて・・・なぜでございましょうねぇ。。」
  「それはそうと旅人さん。今宵も拙宅へおとまりなさいませんか。」
  と、おくねばあさんが問いかけると、旅人は、

  「いやいや、今日は急ぐ旅ゆえ、名残惜しゅうございますが、これにてお暇いたします。」
  といって、朝餉も食べずに出てゆきました。
  また近くに寄った際には、是非にとの問いに、是非ぜひと応えあっという間に遠くまで行ってしまいました。
  朝餉の仕度ができたと言ってきた孫の伊知郎左衛門も、
  「あれまぁ・・・なんと早いお発ちだこと・・・」と、呆れていました。


  何日かして、あの旅人が訪れてからおくねばあさんの様子が少し変わっていることに、孫の伊知郎左衛門が気付き、
  おばあさんに尋ねました。
  するとおくねばあさんは、あの日から怖くて切羽詰っているような夢を、全然見ないので、
  毎日が良く眠れて、とてもすっきりと気持ちがいいのだよと、伊知郎左衛門に話しました。
  不思議に思った孫の伊知郎左衛門は、おくねばあさんに尋ねました。
  「おばあさん。。いったい、あの日何があったのですか?」
  おくねばあさんは、一生懸命に思い出そうと努力しました。
  考えて考えて・・・やっと、少しだけ思い出しました。

  「こんなに考えなければならないほど忘れちまってるって、
   あたしもちょっとの間に、う~んと歳をとっちまったのかねぇ。。。なんだかねぇ・・・」

  頭を振りながらそういって、思い出したことを孫の伊知郎左衛門に話して聞かせた。

  「どんな夢を見るのか、と尋ねたので、こんな怖い夢を見るので困ると話したようだよ。」
  「どんな内容かと聞いてきたので、こんなんだよ・・・といったような気がするね。」
  「そしたら急に眠くなって、気付けは、爽やかな目覚めの朝だったって感じだねぇ。。」
  「どうしてこうなったかなんて、おばばには分からんよぉ~」

  孫の伊知郎左衛門は、おばあさんに聞いた話をいろいろ考え合わせ、
  「おばあさん、きっと、あの旅人さんが悪いいやな夢を追いやってくれたのですよ。」
  「いやな夢を追い出したければ、あの旅人さんに話すのが良いのかもしれませんね。」
  「でもまあ、そんな不思議なことがあるはずも無く、
   きっと誰かに話したから、心が軽くなって怖い夢を見なくなっただけでしょう。」
  「ま、それにしても気が晴れて、良かったではないですか。」
  「また旅人さんがいらっしゃったら、夢の話でもされるのがよろしいでしょう。」
  と、家の者たちともそんな話をしていました。

  しかし、二日、五日 半月と過ぎて行きましたが、旅人が現れる気配はありませんでした。








   2013. 7. 5  つづく




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   災害のこと忘れてないよ。
   誰もが決して忘れてないよ。。
   いつだってココロは、あなたのそばに。。。
   忘れてないよ。。。
   

   





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コメント 6

assimane

最近ちょいちょい訪問させていただいてます。
ゆめくい8話目なんですね。
1話から順に読んでみたいと思います。

by assimane (2013-07-09 07:47) 

ゆめ乃

assimaneさん、こんばんは。
いらしていただけて、とてもうれしいです^^
ありがとうございます。
「ゆめくい」は、1年ほど放りっぱなしでしたが、とうとう8話めまで来ました。
なかなか上手には書けていませんが、読んでいただけると、
ものすっごく うれしいです!!
ありがとうございます。
でも、無理しないでね^^;

by ゆめ乃 (2013-07-11 00:07) 

ゆめ乃

qoo2qooさん
tochiさん
aidesuさん
xml_xslさん
flutistさん

こんばんは。
見てくださって、ありがとうございます。

by ゆめ乃 (2013-07-11 00:12) 

彩美

おはようございます。
お話、久しぶりにじっくり読ませていただきました。(^o^)
こちらは梅雨入りも2週間早かったので
梅雨明けも同じように早く明けました。
それと同時に猛暑。連日35度前後。
朝から30度近くあります。^^;
これから夏本番に向けてどうなることやら。
扇風機の前に座りカキ氷が定番です。(^^ゞ
by 彩美 (2013-07-12 10:22) 

ゆめ乃

彩美さん、こんばんは^^
お話し、読んでくださって、ありがとうございます。
うれしぃわぁ~♪

やっぱり梅雨明けは、入った順番で明けていくようですね。
こちらは、まだしばらく明けないみたいです。
どうも、例年よりは遅くなりそうだと言ってました。
でも、暑い!!!!!!です。
夏本番は、もう始まっちゃっていて、
猛夏本番・・・ってのが、別にやってくるのかもしれませんよ。
おそろしぃ~~~。。。

扇風機の前でカキ氷。
今日、あたしも真似しました^^
ちょっとだけ、ぶるっと震えました(笑)
なんとか、この暑さを乗り越えましょうね☆

by ゆめ乃 (2013-07-17 00:39) 

ゆめ乃

いっぷくさん
今造ROWINGTEAMさん
sazanさん
kenさん
多夢さん
tasukaruさん

こんばんは。
見てくださって、ありがとうございます。

連休中は、雨が降ったり止んだり。
ふわりと浮いている雲ごとに、雨が降ったりしていて、
それがまたもの凄い降りようで、ビックリしていました。
その雨のおかげで、もの凄い蒸し暑さ。
お休み中もバテバテです。
皆様も、体調には気をつけてくださいね☆

by ゆめ乃 (2013-07-17 00:45) 

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