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花夢 - 春の章 3 - [Novel]





桜の頃、お堀に浮かぶ小船の上には、
古代衣装を纏った船人たちが・・・

たまたま時代行列の日だったからかしら?
初めて見ましたが、なんだかとてもいい感じでしたよ^^

今年の桜エピソードでした☆



さてさて、ではよろしければ
お話の続きでも読んでみてくださいな。





お話の順に読んでいただけるとうれしいです。


春の章 -1・2- -3- -4-つぎへ -5・6-









花夢― 春の章 3 ―





          いくつもの、春を抜けて、夏を追い越し、実りの秋に、心閉ざす冬。

          そして、また、めぐり来る・・・春。


          幾つもの季節が巡っても、長い年月を過ごしても、

          もう二度と、儚来(はかなき)の姿を見ることはなかった。



          あれから、どのくらい経ったのだろう・・・。

          「眠り続けた、魔女も、もう目覚めたと聞いた。」







   「なのに・・・」

   「このわたしといえば、こんなに長く、カガミ湖のほとりに立っている。」

   「儚来(はかなき)のように、話をしてくれるモノもいない。」


   「見てごらん。」

   「ピンク色の花も、今では薄墨色に変わり、節々にはモスが宿り、」

   「あの頃の面影もない。」


   「菜の花は、今でも、足もとで咲き競い、あの頃と変わらぬ美しさを保つというのに・・・。」


   「あの頃のわたしに、もっと、慎み深さがあったなら。」

   「もっと、謙虚でいられたら・・・。」

   「いまさら言っても、詮無いこと・・・。」


   「あ、ああ・・・。」







   どのくらい、嘆いていただろう。
   その間にも、菜の花は移り変わり、さくらは年をとっていった。


   もう、自分を誇れるものが、何も無くなってしまったかのようで・・・。
   春が来ても、咲く花の数は、どんどんと減り続けた。


   呆けたような、眠ったような、己の殻に篭ったような・・・、そんな日々。
   突然、小さな声が聞こえた。



               『こんにちは、おじいちゃまさくら様。』

               『聞こえますか。』



   ふと、我に返った老木は、ゆっくりと、辺りを見回す。







   「おや、お嬢ちゃん。」

   「わたしと、お話しが出来るのかい。」

   「うれしいねぇ。菜の花さんとのおしゃべりは、何百年ぶりだろう・・・。」


   「その昔ね・・・」



               『うふふ。うふふ。』 



   「おや、お嬢ちゃん。どうしたのかね。」



               『あのね。わたし達は、何百年かに一度、稀にね、』

               『まれに、過去の記憶を持って、生まれてくることがあるのです。』

               『わたしは、儚来(はかなき)の記憶を、かすかに持って生まれました。』


               『あなたのことを知っています。』


               『わたくしの名は、櫻来(さくらき)です。』




   「あ、あぁ・・・。」




   さくらは、枝の先のサキのさきまで震わせて、泣きました。


   泣いて、鳴いて、啼いて。

   その声は、根っこの底から、幹じゅうに広がり、細い枝先まで伝わって、

   その身を熱くさせました。


   いつか、泣き声がやんだ時、どこからともなくyamakaseが現れ、

   暖かな、春の風を送ってくれました。




   ああ・・・。

   春だね。




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彩美

桜の咲いている川で船でのんびり。
風流だね。(^^♪
by 彩美 (2012-06-04 10:53) 

ゆめ乃

彩美さん、こんばんは。
古めかしい衣装といい、漕ぐ姿といい、
なんとも風流な感じでしょ!!
この日は、時代行列の日だったからかも知れませんが、あたしは初めて♪
だけど・・・ってことは、毎年やっていたのかな?

by ゆめ乃 (2012-06-22 01:58) 

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