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花物語 [Novel]





芽が出て 花が咲き
いつしか小さな実をつけて
静かな時の中で 実を結ぶ

そんな 繰り返しのような営みの中にも
ひそやかな出来事がありました。



----- ----- ----- ----- ---








     ある寒い日の朝、やっと顔を出したお日さまの光に、
     今まで閉じていた羽をこすり合わせながら、
     小さな虫は言いました。


     ねぇ・・・。
     こんなに寒い朝なのに、
     あなたはどうして咲いているの?


     ねぇ・・・。
     仲間はすべて茶色くて、もう誰も立っていないのに・・・
     あなたはどうして立っているの

     怒りもなく 意地もなく
       ただ 微笑むように咲いている
     ねぇ。。。
     ねぇ・・・ どうしてあなたは ひとりなの



     すると、今まで何事もなく咲いていた花は、
     ほんのちょっと背を伸ばし、小さな虫に言いました。


     私は、独りでもなく意地でもなく
     ここに咲いていられることを喜びに、
     ここに立っているんだよ

     足元で茶色くなって倒れた仲間たちは、
     ただそこにあるのではなく、
     私の根元を、守っていてくれるんだよ。

     春が来て ちゃんと新芽が出るまで
     見守るのが私の使命
     春が来て、新芽たちが生まれ来たら
     私の役目も終わるのさ

     私がいちばん悲しいのは
     春になっても・・・
     待てど暮らせど 新芽たちが出てこないこと
     そしたら私のすべてをかけて
     新しい種を作り うんと遠くまで風に乗せ
     新しい命を守るんだ

     そのとき私はこの茶色の
     生きた証もすべて無くしてしまうんだ
     きっと・・・
     きみと出逢えたことさえも、すべて忘れて
     ・・・しまうんだろうなぁ~。。。


     ねぇねぇ。お花さん。。
     どうしたら新芽は出てくるの?
     ぼくにお手伝いできることは何かあるぅ?


     いえいえ 小さな虫さん。
     これは時の流れが決めること
     とても大きな、自然と言うときの流れには、
     だぁれも逆らえないんだよ。

     小さな虫さん。
     あなたは、あなたのための一生を
     精一杯生きなさい。


     お花さん・・・ それでも僕は・・・。


     小さな虫さん、ありがとう。
     あなたの心がとてもうれしくて、
     わたしには、それで十分なくらい幸せです。
     けれども季節が彷徨って、あなたの助けを必要とするときが来たならば、
     その時は、どうぞ・・・
     どうぞチカラを貸してくださいな。

     私の身体が千切れる前に、立派な種が出来るよう・・・。


     小さな虫と季節はずれの花は、
     互いにかばいあい、春の訪れを待ちました。


     そして、季節はめぐり・・・。



     その小さな虫と季節はずれの花は、
     今、どうしているかは分かりませんが・・・。

     時折、こんな花を見かけます。







     少し季節のおかしな年、
     ずっと新芽が出るのを見守り続け、
     そのお役目から開放された守り花が、
     枯れてもなお、色あせることなく立ち続ける姿。。

     どこか誇らしく どこかホッとして
     なんとなく笑顔が見えるような、
     そんな美しさを残したまま・・・。
     足元には、背中に薄い羽をきちんと折りたたんだ
     小さな虫の姿と共に。。




* * * * * - - - - - * * * * * - - - - - * * * * * - - - - - * * * * * - - - - - * * * * *






     花は花として、ただ美しく咲いているだけでなく、
     いろんな人や生物や植物、自然などとふれあって、
     その時々のやさしさと厳しさで生きているのでしょう。

     花が美しいと感じるのも、猛々しいと感じるのも、
     そのふれあった瞬間の心の持ちよう。
     愛された花は、愛にこたえようと・・・。
     野に咲く花は生きることの意味を・・・。
     誰かに伝えようと、咲いているのかも知れませんね。


       生きて活きる
       行きて逝きる






  2007-02-21 02:25:01up
  2007-11-27 改





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コメント 21

 おはようございます。
 なんだか色々と考えさせられます。
 いいお話でした。
 しばらくして、また読み返してみます。
by (2007-11-27 05:40) 

gehirn

こんにちは。すばらし~いの一言です。
こういったものを世界中の子供たちに読んでもらったら
命の大切さ、生きる価値など、大切なことを学び、もっと
おおらかな気持ちが持てるのではないでしょうか。
by gehirn (2007-11-27 08:32) 

e_chan

こんにちは
こんばんは
この季節に咲く花
みんな、肩を窄め歩いている。
多分、人目に付かないのでしょうね。
この花、この詩、素敵です。
by e_chan (2007-11-27 11:07) 

k-sakamama

素晴らしいですね。
自然の原理に逆らわないこと。
どんな小さな生物、植物を愛でる気持ちを持ち続けたいと思います。
by k-sakamama (2007-11-27 13:46) 

アールグレイ

今回も素敵な花物語、ありがとうございます^^
花は美しく、見る人たちを癒してくれますが、一つ一つに、息絶えるまでの
花の一生があり、精一杯の命がありますね。
話しかけ、愛情を注ぐと、お花たちもそれに答えてくれるように思います。
私も、毎朝、きれいなお花さんを愛でられて、ありがとうと気持ちを送っています。
by アールグレイ (2007-11-27 19:19) 

kemm

なかなか良いお話で、時々立ち止まって考え直してみたりしながら読ませてもらいました。この花、ストーリーにぴったりの感じですけど、どちらが先なのでしょうか?
by kemm (2007-11-27 19:53) 

綺麗な花。
哀れな花。
逞しい花。
痛々しい花。

花は人の鏡なのかな?
by (2007-11-28 01:22) 

チャッピィー

おはよう御座います。
良いお話ですね・・素敵です・・・
by チャッピィー (2007-11-28 12:24) 

ガンバルおやじ

冬はお花にとって辛い季節ですよね。
最後の下り、意味深ですが何か悩み事でも・・・
by ガンバルおやじ (2007-11-29 05:23) 

miwa

小さな世界の優しいお話にキュンとしました♡
花や虫たちは、本当にそんな会話をしてるかもしれませんね(*^_^*)
素敵な物語をありがとう♪
by miwa (2007-12-04 00:35) 

ゆめ乃

みみけんさん、こんばんは。
お返事が遅れて、ごめんなさい。
拙いお話しを、読んでくださって、ありがとうございました。
誰かのため・・・って思えたら、生きるのも楽しいかな。。なんてお話です。
楽しんでいただけたら、それだけでうれしいんです(^-^)
ありがとうございます。
by ゆめ乃 (2007-12-04 01:44) 

ゆめ乃

gehirnさん、こんにちは。
お返事が遅くなって、ごめんなさい。。
読んでくださって、ありがとうございます。
そんなに褒めてもらえると、ピヨピヨと小さな羽根をばたつかせて、
どんどん昇って行っちゃいそうです(笑)
何か、生きることの小さな意味を感じてもらえたなら、こんなステキなことは無いですね。
本当に、ありがとうございました。
by ゆめ乃 (2007-12-04 01:47) 

ゆめ乃

e_chanさん、こんにちは☆
お返事が遅れて、ごめんなさい。。

ひっそりと咲く花、つつましく暮らす人々。
隠れて見えないところでも、愛がいっぱい流れています。
ステキなことですよね☆
読んでくださって、ありがとう。
by ゆめ乃 (2007-12-04 01:53) 

ゆめ乃

k-sakamamaさん、こんばんは。
お返事が遅れて、ごめんなさい。

拙いお話しを読んでくださって、ありがとうございます。
k-sakamamaさんのやさしいお気持ち。。
こんな風に考えられるって、本当にステキです。
ありがとうございました。
by ゆめ乃 (2007-12-04 01:56) 

ゆめ乃

アールグレイさん、こんばんは。
読んでくださって、ありがとうございます。

アールグレイさんとお花は、切っても切れないステキな関係ですものね。
注がれている愛情の深さを、いつも感じさせていただいています。
見逃しているどんなものにも宿る命。
タイセツニシタイですね。
by ゆめ乃 (2007-12-04 01:59) 

ゆめ乃

kemmさん、こんばんは。
お返事が遅くなって、ごめんなさい。

読んでくださって、うれしい感想まで・・・(^-^)
ありがとうございます。
これは、お花の写真と物語が一緒に出来ました。
ある寒い朝、畑のアネモネが初冬に咲いているのに驚き、
そこでじっとしている虫さんに出逢い。。
しばらく歩いたときに、立ち枯れをしているお花に出逢いました。
そうして、このお話は生まれました。
自然は、ただそこにあるだけなのに、
いっぱいのことを、語りかけてくれているんですね(^-^)
聞いてくださって、ありがとうございました☆
by ゆめ乃 (2007-12-04 02:05) 

ゆめ乃

binpakuさん、こんばんは。
お返事が遅くなって、ごめんなさい。

ひらりと舞い落ちる花びら
あなたの声 聞こえそうで
そっと 片手を持っていく

ふわり舞い上がる花びら
あなたの気配 そこにいるようで
両手をギュと 胸の前で合わせたりして・・・



花は人の心を映す鏡なのではなくて、
人がそうでありたいと願う心なのかも知れませんね。
by ゆめ乃 (2007-12-04 02:11) 

ゆめ乃

チャッピィーさん、こんばんは。
お返事が遅れて、ごめんなさい。

お話しをよんでくださって、ありがとうございます。
チャッピィーさんの、「素敵です・・・」のつぶやきだけで、
チャッピィーさんのお心で感じてくださったやさしさが、あたしに届いたような気がしました。
本当に、ありがとうございました。
by ゆめ乃 (2007-12-04 02:14) 

ゆめ乃

ガンバルおやじさん、こんばんは。
お返事が遅れて、ごめんなさい。

ニヒ。。ご心配をおかけしちゃいました(^-^)
とっても、いたって、元気ありすぎです!!
最後の言葉は、こんな気持ちで最後の最後まで、頑張って生きる命の強さを・・なんてね(^-^)
でも、強さを強調するほどに、弱さを隠してしまいがち。
この言葉は、折れそうになっている心の表れなのかもしれません。
ガンバルおやじさんのお心配りが、本当に身に沁みて・・・
あったかいものが、たくさん心に広がってきました。
ありがとうございます。

そうそう。。
もうお花は寒さが苦手なものが多いので、
鉢植えのお花は、家の中へ、プランターのお花は、
風除けのある場所へと、お休みごとに移動をしています(^-^)
by ゆめ乃 (2007-12-04 02:23) 

ゆめ乃

Anneさん、こんばんは。
お話しを読んでくださって、ありがとうございました。
なんだかね、そんなふうにお話しをしているような気もするでしょ(^-^)
Anneさんの、やさしさアンテナにたどりつけて、とてもうれしかったです。
ありがとうございました☆
by ゆめ乃 (2007-12-04 02:29) 

ゆめ乃

西尾征紀さん
まさおさん
kazzさん
takagakiさん
プリンセス アイコさん
CARRERAさん
ひでさん
yannさん
イリスさん
yukoさん
COCOさん

こんばんは。
拙いお話を読んでくださいまして、ありがとうございました。
せっかくお出でいただきましたのに、お礼が遅れまして、申し訳ございません。
いつも、何気なく通り過ぎていることにも、
ほんの少し違った角度からのぞいてみると、
また違った世界が見えてくるときもあるはず。
そこには、ワクワクするようなこともあるかも知れませんので、
ぜひ一度、立ち止まって、小首をかしげて眺めてみてください(^-^)

本当に、ありがとうございました。
by ゆめ乃 (2007-12-04 02:38) 

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