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元気です。- part 4 - [Novel]




その影は、少しずつちぃさなすずめのいる方へとにじり寄って行きます。
それでも夢中になって草の実をついばんでいるちぃさなすずめは、
いっこうに気づく気配もありませんでした。

陽はほんの少し西に傾き、暗闇に隠れていたはずの影が、
はっきりと姿を見せるようになってきました。








  うわっ!! 蛇です。
  それもとても大きな蛇が・・・。
  でも蛇はとても賢く、ちゃんと風下に回って、ちぃさなすずめの警戒心の無さをよくよく観察していました。
  そして、頃合もよいと見ると・・・。
  カサコソとほんの少しの音を立てながら、ちぃさなすずめの近くへと移動し始めます。。。
  獲物を狙う蛇の目には、妖しい光がキラリ~ンと・・・。

  ちぃさなすずめは、なんてお馬鹿さん。
  あれほど両親に教えられていたことを、すっかり忘れてしまうなんて。。
  ついさっきまで、ちゃんと復唱できていたことが、
  食べることだけに夢中で、すべてを怠ってしまうとは・・・。
  ちゃんと実践で応用が利かなくっちゃ、何にもやってこなかったのと同じこと。
  お勉強とは、実際に使えなくっちゃ、まるで意味が無いんだからね。
  あぁ~あ。。。
  だれかぁ~。。助けてあげてよぉ~。

  こんなにヤキモキしているこちらの気持も知らず、なんと呑気にご飯を食べているんでしょう。。。
  もう、そこまで危険が迫っていると言うのに・・・。


  ぎゃあ~  ギャギャア~

  突然、高いところから叫び声が・・・。

  ちぃさなすずめは、何事かと空を見上げると・・・。
  太陽の中の小さな粒が、急激なスピードで大きくなり、こちらへと近付いてくるのがなんとなく見えました。
  そして、その鳴き声はいっこうにやむことなく、何かに向って発せられているようでした。

  なんだろう・・・?
  ちぃさなすずめはふと、周りを見回してみました。
   !! なんと、一本先の木の枝に鎌首を擡げたでっかい蛇が、
  ちぃさなすずめのほうを狙っているではありませんか・・・。

  驚いたちぃさなすずめが、羽をバタバタさせるや否や、
  蛇が小枝を使って飛び移って来るのが見えましたが、ちぃさなすずめはバタバタ・バタバタ・・・・。
  腰が抜けてしまったようで・・・。





  その時です。
  太陽の中の黒点が大きくなってきたかと思うと、蛇の鼻っ先をかすめてビューっと。
  蛇は不意打ちをくらい、何が何か分からずに、思わず擡げた頭を引っ込めてしまいました。
  そこへすかさずもう一度・・・。
  蛇の頭をめがけて黒い物体が・・・。
  よくよく見ると、子ガラスではありませんか。。

  それでも蛇は、不意打ちがよほどこたえたらしく、
  先ほどとは打って変わったすばやさで藪の中へと逃げていってしまいました。

  ちぃさなすずめは、ハァハァと息も絶え絶えで、何事が起こったのかさえ、うまく把握できていませんでした。
  少しすると、精一杯大きく見せようと翼を広げて、まだクチバシに黄色の残る子ガラスが下りてきて言いました。


  おい、おまえ。 大丈夫だったか?
  この前から、あの窓のところでピーピー鳴いてたよな?
  あの日、みんなが逃げ出した時に、逃げ遅れたのかぁ?
  まだ、誰も帰ってこねぇのかぁ?
  ひとりでまだ飛べないのかぁ~?


  ・・・ ぼ・僕ぅ~。。。


  なぁんだお前、泣いてんのかぁ?
  まだ、誰も帰ってこねぇのか?
  んじゃ、一人で生きて行かなくっちゃなんねいぞぉ。。
  おらと一緒だなぁ。。。


  か・カラスさんもひとりなの?


  なんだぁ、喋れるじゃないか。
  んだよ。
  おらぁも、ひとりぼっちなんだ。
  でもなぁ・・・。
  おめえも、母ちゃんから習ったことあるだろ?
  外へ出るときと、外で食べ物をついばんでいる時は、よくよく回りを注意しなさいって。
  お前、隙だらけだったぞ!!
  おいらの気付くのが、もうちょっと遅れていたら・・・。
  気をつけろよな!!


  あ。。。ありがとう。。
  僕、外へ出るのも初めてだし、昨日はご飯が食べれなくって、もう夢中だったんだ。
  お母さんに教えてもらったこと、全部忘れて食べていたよ。。
  ありがとうね。
  本当に助かったよ。

  でも・・・。
  これからひとりっきり。。。
  どうしていいのかなぁ・・・僕。
  まだ、上手に飛べないんだ。
  それとも、じっとお母さんを待ってたほうがいいのかなぁ。。。


  それは、お前の好きな方にすればいいけどさ。
  お前の家族が、すぐに戻ってくる・・・なんて、考えない方がいいぜ。
  それより、自分で生きていくことを考えた方がいいぜ。
  おいらは・・・。
  まだ、もっと小さい頃、両親が死んじゃって。。。
  一人で生きていくしかなかったんだけどな。

  お前の家族は、まだ死んじゃいないし、いつかきっと会えると思うけど・・。
  それまでは、一人で生きていかなくっちゃな。。
  おいらでよけりゃ、しばらく一緒にいてやるから、がんばれよ。


  。。。。。。。 わぁ~ん。。


  ちぃさなすずめは、急に泣き出してしまった。
  心細かったんだね。
  よっぽど、気を張りつめていたんだね。
  何にも出来ないちぃさなすずめなりに。。。

  不意に泣き出したちぃさなすずめに、最初は戸惑っていた子ガラスだったが、やがてもっと幼い日のことを思い出し、
  お互いが抱き合うように、大きな声で泣き出しました。
  それは、お互いの心が通い合った瞬間でもありました。

  そして陽は、西の山へと落ち、今日も一日が終わろうとしていました。






-Part5-に、つづく





  2005-10-25 05:35:03up
  2008-03-16 改



元気です -1- -2- -3- -4- -5-つぎへ -6- -7- -8-


元気ですは、お話の順に読んでいただけるとうれしいです。
よろしければ、番号をクリックして読んでくださいね^^




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yann

うんうん。
ひとりぼっちじゃなくなったね。
続き、続き。
楽しみデス。

お、そういえば一番乗り?

by yann (2008-03-16 23:58) 

gehirn

一瞬、ダメだと思っちゃいました。
だって・・・
でも、親雀が助けに来てくれたのかとも思いました。
カラスって黒いから、なんか悪者的存在になっているけれど、
やさしい子ガラスが来てくれて、本当によかった・・・
ほぅ~っと一息。
by gehirn (2008-03-17 07:12) 

ゆめ乃

yannさん、こんばんは。
一番乗りしてたこの頃、まだあたしもここにいたような気が・・・(^-^
読んでくださって、ありがとうございます。
お返事が遅れて、ゴメンね。

by ゆめ乃 (2008-03-20 20:26) 

ゆめ乃

gehirnさん、こんばんは。
カラスって、ちょっと意地悪な感じがするけど、
時々見かける遊んでいる姿は、やんちゃ盛りの子供のようで、笑っちゃうときもあるのよ^^
そんなカラスくんを思い描いてみました♪
読んでくださって、ありがとうございます☆

by ゆめ乃 (2008-03-20 20:32) 

ゆめ乃

すぅ〜ちんさん
イリスさん
takagakiさん
たたらさん
binpakuさん
kemmさん
k-sakamamaさん

こんばんは。読んでくださって、ありがとうございます。
読んでいただけたこと、読んでいただけること。。
そのことがとても励みになります。
ありがとうございました。

by ゆめ乃 (2008-03-20 20:35) 

Anne

ふぅ~、ホッとした~( -。-) =3
続き、続き♪
by Anne (2008-03-24 00:00) 

ゆめ乃

Anneさん。。
いろいろ一度にたくさんのことを・・・と思ったことはなぁい?
もし、そんなことがあって、ちょっと辛くなっちゃったら。。。
深呼吸をしましょ^^
大きく両手を空に突き出すようにして。
きっと、とっても気持ちがよくなって・・・。
いろんなことが、うまく回ってくれるようになるわよ。

読んでくださって、ありがとうございます☆


by ゆめ乃 (2008-03-24 23:29) 

ゆめ乃

miya_gonさん、こんばんは。
たくさん読んでくださって、ありがとうございます。
そうそう。。
先ほどmiya_gonさんのブログにうかがったのですが・・・。
機内食のお話は、興味津々^^
後で、ゆっくりとうかがわせていただきます☆


by ゆめ乃 (2008-03-24 23:38) 

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